ソニー CDX-C90
1998年秋、前モデルCDX-C9000の後継としてCDX-C90がお披露目された。
1996年秋に発売を開始した、超高級デジタルリファレンスサウンドシステム
XES-Z50のテクノロジーと、スタンダードなソニー社製CDプレイヤーの
コストパフォーマンス性を両立させたモデルとされる。
当時のソニー社自らがカーCDプレイヤーのリファレンスと位置付け、
この頃としてはかなりの高音質を追及したモノに仕上がった内容でした。
バス&トレブル回路をパス出来る左右独立の電子ヴォリュームや銅版や銅ビス使用により
メカからのノイズを遮断した独立基盤のプリアンプ部、使用のパワーケーブルを
基盤直付けとする事で安定した電流の供給を行える様にしている電源部分。
更に外来ノイズの悪影響を断ち切る1mm厚の銅メッキシャーシ、
車内での使用を前提では弱点とされるCDの音跳びに対しても3秒間の
メモリーストックが出来るADVANCED ESPを採用する等、随所に徹底した拘りを見せていた。
高級ホームオーディオのソニーユーザーさんには堪らないES(Extremely high Standardの頭文字を
取っている事はホームオーディオ愛好家ならご存知)のロゴがディスプレーに浮かび上がり、
そんなマニアが喜びそうな心憎い演出もなかなか高感度が持てましたねぇ〜。
本機の最も大きな特徴でもある可変(V.C.)のデジタルフィルターは、
演算式で異なる4種類のフィルター特性を切り替える事が可能。
更にはオーディオフリークが喜びそうな75Ω同軸デジタルアウトも装備、
イルミネーションはグリーンとアンバーが選択出来、その上アルパインJuba7909Jや
F#1Statsu7990J等と同様に音の鮮度が向上すると言うディスプレーの照明を消す事も、
音質を追及する方々には重宝した機能と言える。
アナログとデジタル、2つの技術を集めたリファレンスCDプレイヤーでしたが、
発売時はCDヘッドユニットのまさに超黄金時代。ナカミチやDENON、マッキントッシュに
サウンドモニター等々、多くの銘機達が犇めき合う中で一般的なカーオーディオユーザーが、
ソニーと言うブランドを選択する方が多くいたのかは聊か疑問?です(違った意味で隠れた銘機?)。
その後、このCDX-C90も2003年にはカタログから消えてしまい、同社のトップエンドには
最大出力45W×4の内臓アンプを持つMP3ファイルが保存可能なハードディスク装備の
HDDオーディオライブラリーシステムMEX-1HD(発売時価格¥160.000税別)が君臨。
しかし、名門ソニーも2006年ついにカーオーディオ事業の撤退という結果となってしまい、
実質のソニー製アンプレスCDヘッドユニット最終機がこのCDX-C90という事になる。
スペック〜CD部・D/Aコンバーター:20bit8倍オーバーサンプリング、
周波数特性:5〜20.000Hz、SN比:109dB、ワウフラッター:測定限界以下、
プリアウト出力レベル:4V(最大)、共通部・電源:DC12V(−)アース、
重量:約1.6kg、発売時価格:¥130.000(税別)*ソニーカタログ参照。
ソニー最後のアンプレスCDヘッドユニットとなってしまったCDX-C90。
CDX-U8000(1991年発売)、CDX-C9000(1996年発売)と今まで視聴して参りましたが、
前モデルに比べ機能も発売時の価格も向上しているので期待は大。
しかし独特なサウンドの世界と味付けがあるソニーのプレイヤーには、
好き嫌いがハッキリ分かれる可能性はあるけれど…。
そんな訳ですが今回もアルパインが誇る往年の銘機、Juba7909Jが比較対象となりました。
高級感あふれる銅メッキシャーシに押し印されたトッププレートのロゴマーク、
価格を超えた機能を装備したμディメンションのJr.Series、
小型2chモデルu-Jr5.2x(発売時価格¥30.000税別)と
スレッドショルドの元代表(現パスラボラトリーズ創設者)でも有名な超一流のアンプ職人、
ネルソン・パス氏が手がけた純A級アンプで往年の銘機、
サウンドストリームA100U(発売時価格¥198.000税別)を視聴用に選択。
やっぱりこの頃のサウンドストリームは今もなお伝説とされ、現在でも多くの方々に語り継がれている。
高級ホームオーディオのソニーユーザーの方でしたら“ESPRIT”はご存知と思う。
1978年に発足したソニー高級オーディオブランドであった。
発売時は採算を度外視したモデルも多かったが、車内音響に到っては最高級機XES-Z50も
最初はそんなポリシーの元、発売時価格¥600.000(税別)と言う究極のカーオーディオを
世に送り出した(後にやっぱりと思ったが¥850.000税別と価格改正)。
そのソニーESシリーズのクオリティーを受け継いだ、最後の本格的アンプレスCDプレイヤーがCDX-C90でした。
一聴した時のサウンドは前モデル等とは桁違いに良くなっており音がハッキリ、スッキリとし
スピード感はかなり良い方向に改善されている。まずはクラッシック音楽だが、
線は細い気がするが綺麗でまとまりの良さがあり、高音楽器の瑞々しさは流石と言えるかも。
コントラバスや太鼓などの低音楽器のエネルギー感はもう一歩迫力が欲しい気もするが、
そこは以前からのソニーらしさの残るところ。
難しいとされるピアノソロの再生は、平均点以上を余裕でクリアー。
ジャズはキックドラム、スネアも軽快でサックスはシャープに立ち上がり音の厚みも良好。
レンジも広く、分解能力も高いのがアルパインJuba7909J程の立体感と表現力は薄く感じる所も。
ヴォーカルを視聴した際、若干ハイ上がりになる傾向があるため女性アーティストではピーキーになる可能性がある。
しかし音の肌触りが良く、発売時の価格からすればかなりの出来ではあった。
現在では1946年に「東京通信工業株式会社」からスタート、日本発のテープレコーダーや
トランジスタラジオを世に送り出し1958年に社名をソニーと改め、
今日に到るまで幾つもの音響機器で銘機達を作って来てくれた。そんな長い歴史と伝統のある名門も、
カーオーディオ部門から完全に撤退する事となる。
時代の流れとは言え悲しい現実では御座いますが、いずれ個人的には復活を望みたいですねぇ〜。